ホントにあった不思議な話【第5話】

ホントにあった不思議な話

いつ頃だっただろう・・・

父と母が何となくギクシャクしていて、子供ながらに何かあることを感じていた。

そして、また原因不明の熱を出し、学校を休んで部屋で寝ていた私のところに、

パートの休憩時間を利用し、母が子犬を連れて帰ってくれた。

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子犬

ベッドで寝ている私を起こし、母が後ろ手に隠したものを、前に見せてくれた。

そこには、まだ目も見えているのか分からないぐらいの、小さな子犬がいました。

「この子飼おうと思うねん。」と母

「まだ、生まれて一か月やから、あと一か月母犬と過ごさなあかんから、休憩時間の間だけ連れて帰ってきたんよ。」

「わぁ~抱かせて~」と私。

指をチュッチュと吸い付いてくる子犬はホントに可愛かった。

2か月後、子犬の名前は「ダンディ」

あまりにもブサイクで可愛くて、かっこいい成犬になるようにとつけたんです。

それから、二年後、私はこの子犬と悲しい別れをする事になる。

喧嘩している・・・

何となく、両親がもめている事を子供ながら分かっていた。

父も母も兄も、私には悟られないようにしていることも分かっていた。

下の階から聞こえるもめているような声。

最初のころは、収まるまで2階にいて時間をつぶしていた。

慣れてくると、私が下に降りると、何事もなかったように普通にしてくれるので、

わざと明るく下に行くようになった。

だから、私は気づかないフリをしてい続けていたんだ。

あの時までは・・・・

頭を撫でられ声が聞こえる

夕方、寝ていた私の頭を触っている感触があった。

何となく、母が何かを言って部屋を出ていくのを感じた。

睡魔に負けて寝ている私の耳元で、

「起きろ~!」と声が聞こえた気がした。

寝ぼけながら、起き上がると、部屋の扉がゆっくりと少しだけ開いた。

なんなんだろう?と思いながら、部屋を出ると、母が悲しそうな顔をして出ていくのが見えた。

「・・・・・!」

何かがささやいたが、何を言われたのかは今となっては、覚えていない。

私はあわてて母親を追いかけた。

靴も履かずに・・・・・必死で走って追いかけた・・・・・

泣きそうな母の顔

追いついた私に

「一緒にくるか?」と母。

一瞬で家を出ていくんだとわかりました。

私は、どう返していいのか分からなくなり、

「どこ行くの?」

「買い物?」

「お出かけ?」

「帰ってくる?」

何も答えない母に、私は、泣きながら

「家に帰ろ。」と伝えました。

「ダンディの散歩行かなきゃ」と引っ張って連れて帰ってしまいました。

あの時の私は、母の気持ちを理解する事は出来なかった。

散歩

「足を洗ってきなさい。お母さんがダンディの散歩に行ってあげるから」

私は足を洗って、家で母が帰ってくるのを待ちました。

帰ってくるのか不安を感じながら・・・・・

ダンディ・・・

帰ってきた母。私を大きな声で呼びました。

私は帰ってきた母の声を聴き安心したのもつかの間。

ダンディを抱っこして泣いている母親がそこに立っていました。

母の話によると、急に飛び出して車にはねられた。車は逃げていった。

そっと、ダンディの布団の上におろすと、外傷のないダンディは寝ているようだった。

でも、息もしていないのは子供の私にもわかりました。

そっと頭をなでると、ダンディの意識が見えた気がしたんです。

ダンディのリードを放し、車の前に飛び出そうとする母。

それをかばうように、飛び出したダンディ・・・

もう、言葉が出ませんでした。

ただ、泣ぬ事しか私には出来なかったのです。

散歩に一緒に行っていれば・・・

母を止めなければ・・・

後悔しか残りませんでした。

翌日、動物霊園に連れていき、埋葬しました。

その後

変わらない日々の中、母の態度が冷たく感じていくことになるんですが、

いつも兄が私をかばってくれました。

あの時、声に起こされていなければ。

母を止めていなければ。

散歩に一人で行かせなければ。

いろんなことを考えましたが、あの時止めた私がいなければ、母は別の人生を幸せに歩んでいたのかもしれない。

子供のために我慢。と人は言うけれど、子供のために我慢させてしまった子供自身は、

自分のためにいろんなことを我慢させてしまった事を後で後悔する事になると私は思っている。

あの時の私は、一緒にいてほしくて必死にとめたけど、結局、高校生になった私も兄も、

ほとんど家に寄り付かなくなってしまった。

寝に帰るだけの家になってしまいました。

嘘のようなホントの話。

最後まで読んでくれてありがとう。

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