ホントにあった不思議な話 【第7話】

ホントにあった不思議な話

中学生の私は、芸能関係の裏方の仕事がしたくて、とっかかりに劇団のオーディションを受けることにした。

親に内緒のオーディション。

受かるとは思わず、受けたオーディションだったが、劇団に入ることができた。

でも・・・・

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劇団

劇団に入って、演技の勉強や発声練習。

ドラマのエキストラ。

セットやスタッフさんたちを見たり、いろんなことが新鮮で楽しかった。

それでも、私が見れたのは、ほんの一部だったと思う。

そして、半年が過ぎたころ、舞台に立つことが決まった。

大した役ではないけれど、それでも、練習に行くことや、舞台のセッティングなど見て回るのが、

ホントに楽しくて、練習で夜遅くなることも、気にも留めなかった。

体調不良

いつの頃か、貧血に似た症状が私を襲うようになった。

集中して練習をしていると、ふと意識が飛ぶようになった。

本番もこの調子だとみんなに迷惑をかけることになるな・・・・・

何が原因かわからないまま、練習に明け暮れる毎日の中で、駅から自転車で帰る途中、

小さな墓地の近くを通ったら、おばあさんが見えた。

時間は深夜0時を回ったところ・・・・

「こんな時間におばあさんが何をしているんだろう。」

そう思いながら横を通り過ぎた。

「なんか気になる。」

振り返ったその時!

「えっ?」

おばあさんは、いなくなっていた。

川沿いの一本道。

自転車を停め、あたりを見回したが、おばあさんのいる様子もなく、その時は、怖さもあり、

気のせいだと思って、猛ダッシュで帰ったのだった。

練習最終日

おばあさんを目撃してどれくらい日数が過ぎただろう。

毎日練習で、夜遅くなり、へとへとになって帰っていた道のりも、

「今日で最後かぁ・・・」

と物思いにふけって帰っていた。

相変わらず、体調不良はたまにおこっていたが、本番さえ乗り切れば後はゆっくりできる。

そう思って頑張ってきたが、この日にこんなことになるなんて思ってもいなかったのだ。

おばあさん

前の方におばあさんが見えてきた。

「えっ?また?こんな時間におばあさんがおるわ。」

今日、おばあさんがいた事で、私はどこか安心していた。

この前の事は、居なかったんじゃなく、振り返ったけど気づけなかっただけだと思ったから。

そう思いながら、自転車で横を通り過ぎた時、急にペダルが重くなり、漕げなくなった。

「うゎ・・・・・。」

「どうしよう・・・・。」

一瞬でいろんな事が、頭をよぎった。

自転車から降りるのも、怖くてどうしようか悩んだ。

踏ん張った。

ペダルを必死に踏ん張った。

進まない・・・・・・

振り返ると、おばあさんが自転車を押さえていた。

「えっ????」

「これは、まずい・・・・・」

前を向き、

「放して!」

「やめて!」

泣きそうになっていたその時、ふっと暖かい風が吹いた。

同時に自転車が進んだ。

「あっ!いけた!」

私は自転車をこぎながら、振り返った。

そこには、やっぱり、おばあさんの姿はなかった・・・・

小さな墓地沿いの一本道。反対側は川に挟まれていて、隠れるところなんてない・・・・

何だったのか分からないまま家路についた。

本番当日

私は、舞台の途中で貧血を起こした。

何とか出番はこなし、終わったが、一番ひどかったのは最後のシーンだった。

私の出ていた舞台。

それは、戦争を題材にしていたものでした。

感情移入をしていくうちに、私は何かに引っ張られていたのかもしれません。

それでも、何かあるたびに、暖かい何かに包まれる感じがしていたのも事実。

そのたびに、助けられている感じがしていました。

今となっては、あの時の事は、何だったのか突き止めることはできないけれど、

私はいつも、何かに守られている気がしていました。

社会人になると、そんな経験も感覚も少なくなってきましたが、今でもあの時のことは

鮮明に覚えています。

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