中学校の頃の話。
夏休みのある日、私は部活動のために学校に向かって歩いていた。
学区内があまりにも広く、学校まで30分~40分の道のりを、歩く事がしんどくて嫌だったのを
今でも覚えている。
学校前の大きな坂道
中学校の正門前には、大きな坂道があった。
私が登校してくる方とは逆の方向で、正門前を通り過ぎると坂道が始まる感じだった。
途中で合流した同じクラブの友達と、やっと学校についた時、同じクラスの友達が坂道を上がっている所に出くわした。
名前を呼んでも、大きな声で叫んでも、友達は気づかずにどんどん坂道を上がっていった。
その友達は少し変わった子で、一緒にいた同じクラブの友達は
「もう、ほっといたら?行こ。」
「うん。」
行きかけた私だったが、何となく不安を覚え友達にラケットを預け、
「先に行っといて~。」と坂道を走って友達を追いかけた。
やっと追いついたのは、坂道の一番上・・
息を切らしながら、
「何してんの?」と友達の腕をつかみ止めたのだった。
坂の上
友達 「お~!今から部活か?」
私 「うん。夏休みやのにこんなとこで何してるん?」
友達 「このおっちゃんが、ちょっと来てって坂の上から呼ぶから来てん。」
私 「・・・・」
私には誰のことを指しているのか分かりませんでした。
だって、友達は一人で坂を上がっていて、今、この場所にいるのは、私たち2人だけなんですから。
私 「誰もおらへんよ。誰の事言ってんの?」
友達は振り返り、自分の後ろにいると思っていた人がいないことに気づいた。
友達 「あれ?今迄、ここに居たのに・・・・」
友達は私の顔をみて、困った顔をしていた・・
私 「今日は家に帰った方がいいんとちゃうかな。外に出ない方がいいかもよ。」
うなずいて、友達は帰っていった。
2学期
学校が始まった・・・
「おはよ~」
みんなで、だるそうに教室に集まって、うだうだしていると、
夏休みに坂の上であった友達が私を呼んだ。
教室を出ると、話があるからと人があまりいない場所で、話すことになった。
なんとなく、言いたい内容を感じでいた私は、だまってついていくことにした。
誰にも言わないで
友達は、この前の事を人に言わないで欲しかったらしい。
もちろん誰にも言うつもりはなく、
私 「わかってるよ。約束。誰にも言わないから、安心してよ。教室に戻ろ。」
友達 「うん・・・・」
まだ、何か言いたそうにしていた友達に、
私 「どうしたん?なにかあったの?」と聞いた。
友達 「帰りに話そう。時間ある?」
私 「いいよ。」
2人で教室に戻ることにした。
放課後
友達の話は、何となく想像していた事だった。
小さいころから、人に見えないものが見えていた。
もちろん、友達には普通に人として見えているから、会話もする。
でも、周りには、独り言を言っているようにしか見えない。
その事で、周りからは変な人扱いをされていた。
そんな事もあり、友達は人とあまり接することをしなくなってしまったのだ。
私 「不思議なことは誰にでもあると思うよ。
でも、信じていない人からすると、きっと、受け入れがたいんやと思う。
だから、私も不思議な体験をした事は誰にも言ってないし、言うつもりもないねん。
でもな、私は見えるわけでもないし、何となく感じるだけやから、見える大変さはわからへんけど、
あの時、坂道で感じた嫌な感じは、あまりよくなかったと思うねん。
だから、誰かれ構わず話したり、ついて行ったりするのはよくないと思う。
気を付けてね。」と伝えました。
友達は、見分けがつかない時があると教えてくれました。
いい人なのか、いけない人なのか・・・・
ホントの人なのか、そうじゃないのか・・・・
ある日
学年がかわり、クラス替えもあった為、その友達とは会うことがなくなりました。
でも、ある時から学校に来なくなっていました。
そのクラスの子の話だと、急に来なくなったけど、親御さんは他の学校に行かせることにしましたと、
学校に連絡してきたらしい。
そのことがホントなのか、嘘なのか、
私には調べるすべはなく、何となく不安に思ったことを今でも覚えています。
嘘みたいなホントの話。あなたはどう思いますか?
comment